[ オピニオン ]
(2016/10/5 05:00)
日刊工業新聞の本社がある東京・日本橋界隈(かいわい)にはすし、うなぎ、天ぷらなど魚介類を使う料理の老舗が軒を連ねる。江戸時代初期にできた日本橋川の北岸に沿って、魚河岸(うおがし)があった名残だ。
この市場は1935年(昭10)の築地移転まで、300年間にわたり江戸・東京の庶民の胃袋を満たしてきた。現在の築地市場も豊洲移転で80年余の歴史を閉じるかと思われたが、立ちはだかったのが小池百合子東京都知事。盛り土問題や土壌汚染が発覚し、先が見えなくなっている。
都議会自民党や移転推進派にしてみれば「♪小池にはまって/さぁ大変/土壌が出てきて/どうしよう」といったところか。ただ人やモノが集まる市場は“お上”の意向だけでは機能しない。生鮮食品を扱うなら、経済性や建物の新しさよりも安全性や機能性が優先されるのは当たり前のことだ。
築地関係者の一部には、今でも移転自体に反対する声がある。実は、大正年間の関東大震災で日本橋市場が焼け落ち、築地への移転が決まった時にも反対する人が多く、結局、移転完了まで十数年の月日を要した。
やいやぃ!。そんなこっちゃ魚が腐っちまうぜ!―。一心太助の啖呵(たんか)が、お江戸日本橋の魚河岸から聞こえてきそうだ。
(2016/10/5 05:00)