[ オピニオン ]
(2016/11/24 05:00)
薬価の大幅改定が関連業界に波紋を広げている。医療保険財政の厳しさが増す中で、医療費削減を図るための薬価引き下げは避けられない。だが製薬会社の新薬開発や設備投資に対する意欲をそぎかねない懸念も生じており、新たなルールが求められている。
厚生労働省は小野薬品工業の抗がん剤『オプジーボ』の薬価を2017年度から50%引き下げる案を示し、中央社会保険医療協議会総会で了承された。『オプジーボ』はがん治療の画期的な新薬で、小野薬は16年度の販売額を1260億円と見込んでいる。
薬価の改定は2年ごと。本来なら『オプジーボ』の次の改定は18年度となるはずだ。ただ厚労省は16年度の販売額が1500億円を超えると推計し、特例で最大50%の引き下げ要件に当たると判断した。
ルールを拡大解釈した大幅引き下げに業界は反発している。日本製薬団体連合会、日本製薬工業協会は連名で「薬価改定がない時期に、企業公表の売り上げ予測を活用して引き下げるという現行ルールを大きく逸脱した」と意見を表明した。
新薬の開発は高いリスクを抱えながら莫大(ばくだい)なコストをかける必要がある。画期的な新薬で十分な利益が上げられなければ、次の開発への投資に支障をきたしかねない。
一方、政府がこれまで薬剤費圧縮の切り札としてきた後発薬が思わしくない。薬価引き下げやインセンティブ充実などの使用促進策の効果が出ず、20年度に後発薬シェア80%という目標の達成が難しくなっている。特許切れ後の薬を安く製造する後発薬各社は、シェアの伸び悩みで増産投資の計画見直しを余儀なくされている。
新薬と後発薬の双方で、薬価コントロールがうまく機能していないのが実情だ。これを受けて政府は、薬価制度の抜本的見直しに取り組む方針を示している。すべての要望を満たすことは極めて困難ではあるが、国民の生命を守るという前提に立ち、透明性、継続性を担保できるルールづくりが必要だ。
(2016/11/24 05:00)
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