[ オピニオン ]
(2016/12/22 05:00)
「春始御悦向貴方先祝申候訖(春の始めの御悦(よろこ)び、貴方に向かってまず祝い申し候)」―。平安時代に学者の藤原明衡がまとめた手紙文例集が現存する最古の年賀状だという。年始のあいさつに行けない遠方の人へ送った文書が年賀状の起源だ。
今年も頭を悩ませる時期がやってきた。義理は欠きたくないが、年末は何かと忙しい。郵便局で「年賀状は25日までに」といわれると、電子メールか無料通話アプリで済ませてしまおうという誘惑に駆られる。
ギリギリでも元日に間に合う利便性と低コストが電子媒体の魅力だ。日本郵便の2017年用の年賀はがきの当初発行枚数は28億5300万枚と前年比5・6%も減少し、歯止めがかからない。
学生時代の恩師に「何かを省く時には、それがなくなった後の事をよく考えてから決めなさい」と教えられた。年賀状はどうか。メールでも目的は達せられるが、はがきをめくることがなくなった正月を想像すると、なんとも味気なさそうだ。
当時は煙たく感じた説教も、思い起こせばしごくまっとうだったと感じる。今年は音信の絶えて久しい旧友にも“春の始めの御よろこび”を送ってみようか。メアドは分からないけど、昔ながらの住所録は手元にある。
(2016/12/22 05:00)