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未来を拓く日本力(3)EV大競争時代−先行する日産と社長直轄開発のトヨタ

(2017/1/6 05:00)

  • 中国ではタクシーを中心にEVが普及し始めた(ブルームバーグ)

【テスラを追う】

2017年は電気自動車(EV)の大競争時代の幕開けとなりそうだ。米テスラモーターズが先行する中、欧州勢が力を入れ始めた。背景にあるのは世界最大市場の中国と、依然として市場としての存在感が高い米欧での環境規制強化だ。日本勢では日産自動車がトップに立つものの、まだ道半ば。日本勢はEV競争を勝ち抜けるのか―。

IHSマークイットの最新調査によると世界市場におけるEVシェアは40年までに15―35%になる見通し。中国や米国は新エネルギー車(NEV)やゼロエミッション車(ZEV)の定義にハイブリッド車(HV)を含めないとしており、EVの存在感は確実に高まっている。

トヨタ自動車は16年12月、EVの戦略立案や開発を担当する社内ベンチャー組織「EV事業企画室」を発足した。トヨタはもともとエコカーはEVを含む全方位で開発するのが基本姿勢。中でも「究極のエコカーはFCV(燃料電池車)」(伊地知隆彦副社長)と位置付け、その軸は変わらない。

しかし水素社会はすぐには到来しない。その過程におけるZEVの選択肢としてEVも不可欠というわけだ。

【豊田社長直轄】

技術はある。トヨタは「すべてのコア技術がハイブリッド車(HV)」(水島寿之専務役員)と、先鞭(せんべん)をつけたHVの技術をEV、FCVに活用する。

課題はスピードだ。そのためEV事業企画室の実動部隊はデンソーなどグループからの出向者も含め4人という異例の小所帯で、豊田章男社長の直轄組織とした。技術にスピードを加えて、早期にEVでも世界をリードする。

米ZEV規制の強化が間近に迫る中、米ゼネラルモーターズ(GM)は航続距離の長いEVを発表し、米フォードモーターや独ダイムラーもEVへの大型投資を計画。米国を主力とするホンダ、マツダ、富士重工業もEV投入を表明している。

独フォルクスワーゲン(VW)は25年までにEV年販200万―300万台の目標をぶち上げた。ディーゼル車の排ガス不正問題で揺れる中でEV重視の姿勢を鮮明にする。

【競合迎え撃つ】

「やはり見方は正しかった」。競合の動きを自信ありげに眺めるのが日産だ。10年末に発売したEV「リーフ」の販売台数は16年8月時点で累計23万台。世界で最も売れたEVとなった。

だが当初計画にはほど遠い。16年度までにルノー・日産連合で累計150万台とする当初計画に対し、実績は35万台。大幅な未達で「市場環境を読み違えた戦略ミス」(アナリスト)との見方が広がったが、足元の競合の動きは日産が描くストーリーに合致する。

その日産は車種拡充で競合を迎え撃つ。今のところ価格帯は重複しないが、テスラや中国・BYDといった新興メーカーの攻勢も無視できない。EV市場が活況になる中、日産は先行者の真価が試される。(池田勝敏)

(2017/1/6 05:00)

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