- トップ
- 科学技術・大学ニュース
- 記事詳細
[ 科学技術・大学 ]
(2017/2/17 05:00)
物質・材料研究機構先端材料解析研究拠点表界面物理計測グループの板倉明子グループリーダーと東邦大学理学部の宮内直弥博士研究員は、金属中を水素が通り抜ける様子を計測する電子顕微鏡を開発した。金属中の結晶粒や結晶粒の隙間など、水素が通過する場所を特定できる。水素で金属が劣化する水素脆化の解明につながる。
電子顕微鏡の中で金属片の裏から水素ガスを供給し、金属片を通過して表にしみ出してくる水素原子に電子線を当てて、イオン化して検出する。金属の結晶粒界や特定の結晶組織など、水素がしみこみやすい部位を特定できる。水素ガスを連続して供給できるため、透過量を積算して性質を明確化できる。従来技術は一度、金属中に溶け込んだ量の水素しか計れなかった。
測定時間は2000×2000画素の解像度での計測に400秒。分解能は電子顕微鏡の性能に依存し、原理的には10ナノメートル(ナノは10億分の1)以下の計測も可能。金属片の厚みを結晶粒の直径よりも小さくすれば、結晶の種類や向きごとに水素の染みこみやすさを計れる。水素に酸素を混ぜるなど、複合的な効果も検証できる。
水素脆化は金属中に水素がしみこんで、材料をもろくしてしまう現象。水素をエネルギー媒体として使う際に、装置配管やタンクを劣化させてしまう。だが脆化の原理が解明されていなかった。
(2017/2/17 05:00)