[ オピニオン ]
(2017/4/21 05:00)
陸や海に存在する微生物の中で、培養して確認できるものは全体の1%程度に過ぎないという。いかに科学技術が進んでも、人類には未知の事象の方が多い。物理学者のニュートンは、自らを「海辺で遊ぶ少年」と表現した。光や天体などの研究で歴史に残る業績を挙げた天才にとって、多くの発見は世界を限定するものではなく、むしろ広げるものだという実感があったのだろう。文部科学省の現役幹部の天下りを、組織ぐるみであっせんしていた問題。トップである事務次官の引責辞任から間もなく3カ月になるが、いっこうに収まる気配がない。松野博一文科相は「個人によるものではなく組織の責任」と謝罪した。ただ天下り問題の調査報告書によると、事件が起きた過程は明らかだが、原因は特定できないという。実に歯切れの悪い結論だ。同省は月内にも組織改革を含む再発防止の抜本策を示すという。科学は“分からない現象”の存在自体を否定しない。ただそうした場合には研究者が解明に向けた意志を持ち続けるのが普通だ。報告書は論文とは違うが、小さな発見の積み重ねが、いつか官僚の不祥事追放につながるかもしれない。科学を所管する省らしく、原因解明の努力は続けるべきだ。
(2017/4/21 05:00)