[ オピニオン ]
(2017/9/14 05:00)
ビールの危機だそうだ。今夏が長雨だったとか、酒税法改正により安売り規制が強化された影響で販売が厳しいという話ではない。原料の二酸化炭素(CO2)の需給が全国的に逼迫(ひっぱく)しているのだという。
CO2は飲料や食品のほか、工業用途でも幅広く使われている。現在は石油精製工程からの副生が多い。繊維・樹脂原料になるアンモニアの副生物であり、化学メーカーの生産撤退が相次いだことに伴い、供給量が不足している。
この事実を知った“ビール党”は気が気ではないだろう。しかも石油元売り各社の構造改革の行方次第では、さらに深刻な事態となりそうだ。今後、合従連衡後の製油所統廃合が控えているからだ。
中国、四国地方は特に厳しいという。CO2は溶接で多く利用され、瀬戸内海に集中する造船業界と奪い合いになりがち。お隣の九州地方も年間需要の8万トンに対して供給能力は5万トンしかない。ほかの地域からの長距離輸送が常態化しているという。
10月には水島コンビナート(岡山県倉敷市)で大陽日酸が液化CO2の専用製造設備を稼働する。来夏には大分コンビナート(大分市)で昭和電工も続く。来夏の乾杯のためにも、需給が少しでも緩むことを祈りたい。
(2017/9/14 05:00)