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[ 科学技術・大学 ]
(2017/10/9 05:00)
東京大学大学院理学系研究科の高橋嘉夫教授らは、放射性セシウムが河川で水に溶けにくくなる仕組みを明らかにした。東京電力福島第一原子力発電所の事故で大量の放射性セシウムが発生したが、福島県ではチェルノブイリ原発事故と比べ、放射性セシウムが河川中の粘土鉱物に吸着されやすく、プランクトンなどの体内には取り込まれにくくなることを示した。放射性物質の沈殿や凝集による除去手法の開発につながると期待される。
研究グループが両地域の河川を調査した結果、チェルノブイリの事故では河川中に存在する放射性セシウムのうち、水に溶けこんだ割合が70%であるのに対し、福島県では30%と低かった。
X線顕微鏡による観察などから、泥炭地のチェルノブイリでは、河川水中に多く含む天然有機物が粘土鉱物と複合体を作ることで、放射性セシウムの粘土鉱物への吸着を阻害する可能性を示した。
こうした放射性物質の河川への溶解性や移行の挙動が分かれば、放射性セシウムの除去方法を考える上で有効となる。福島県周辺の表層は風化花こう岩が主体。河川水中の有機物は少なく、形成する複合体を安定化させるカルシウム濃度も低い。そのため、放射性セシウムは河川水中に分散した粘土鉱物に強く吸着され、そのまま河口へと流されやすい。河口では海水中の塩分により、放射性セシウムが吸着した粘土鉱物の粒子が凝集・沈降しやすい。
(2017/10/9 05:00)