[ オピニオン ]
(2018/12/26 05:00)
近年の納付率回復に安心せず、きめ細かな制度見直しをお願いしたい。
総務省は25日、国民年金を中心とする年金業務の運営について厚生労働省に改善を勧告した。資格適用の通知や、利用が低調な「追納」制度の周知などを求めている。実施主体である日本年金機構が2019年4月から取り組む第3次中期計画に盛り込むことを想定した。
例えば、現行の年金制度では、20歳になった国民が自主的に加入を届け出るのが前提。届け出がない場合のみ、住民票などに基づいて職権で加入処理をする。ただ公的保険は義務的な制度であり、20歳到達時に一律に資格通知をするなど制度改善ができると勧告した。
また国民年金の場合、過去に免除・猶予された保険料を自主的に「追納」する制度は知られていない。延滞分の「後納」とは違い、10年分を納付可能で、将来の年金額が増やせる。「企業に就職した時、健康保険組合などから追納制度を知らせる工夫が可能ではないか」(総務省行政評価局)という。
いずれも細かな手続きといえよう。こうした勧告が出されるのは、年金制度がいまだに成熟せず、所得税などの税制に比べて国民に理解されていないからではないか。当局の努力不足に問題がある。
国民年金の保険料の現年度納付率は00年度までの70―80%台から急落し、11年度に過去最悪の58・6%を記録した。以後は6年連続で上昇し、17年度は66・3%まで回復。やや計算方法が変わった直近の18年9月末の月次納付率は70・1%となっている。
ただ、この傾向は年金機構の努力というより、景気回復に伴う改善と考えられる。企業に雇用されて厚生年金に移った人も少なくないはずだ。
低い納付率でも年金が破たんしないのは、企業の厚生年金が全加入だからだ。厚生年金のうち基礎年金部分は国民年金と同じ扱いで、制度を支えている。国民年金には免除など難しい問題があることも分かるが、当局のさらなる努力を促したい。
(2018/12/26 05:00)