(2021/2/19 05:00)
さまざまな立場の人々が日本の科学の将来を議論する場となることを期待する。
国内で科学普及団体の設立を目指す動きが進んでいる。有志の研究者や企業人による科学コミュニティーが「日本科学振興協会(日本版AAAS)」の設立を目指す準備委員会を発足した。米科学振興協会(AAAS)の活動を意識したものだ。
AAASは米国の科学普及団体で、国際科学誌として名高い「サイエンス」の出版を手がけることでも知られる。日本には同様の科学普及団体がなく、6月にNPO法人として協会を設立する準備が進められている。
大学院の博士課程学生や被引用数上位の論文数の減少などで日本の科学技術力は世界で地位を失いつつある。日本版AAASは科学者だけでなく企業人や学生、自営業など科学に興味を持つ人々との対話を通じ、国民全体の科学への関心を醸成することを目指す。
世界は多様である。科学の世界は科学者のためだけに存在するのではなく、多くの人の意見が反映されるべきだ。準備委員長を務める豊橋技術科学大学の小野悠講師は「知識と技術は大学や研究機関だけのものではない」と強調する。当然、反対意見を持つ人同士が意見を交わすことも必要になるだろう。
この点で、国の代表研究機関である日本学術会議への政府の対応が注目されている。2020年9月、菅義偉首相による学術会議の会員候補の任命拒否が大きな議論を呼んだ。拒否された学者6人は過去に政府方針に異論を唱えたとされている。反対意見を拒絶するのは、科学だけでなく民主主義の根幹をゆるがせるのではないだろうか。
かつてある学会で著名な二人の研究者が激しい議論を戦わせているのを見たことがある。片方の意見が間違っていることはなく、両者は自分の意見を貫いていた。
多くの研究者の議論が今の科学の発展につながっている。日本版AAASの設立をきっかけに、科学者と一般人との議論が進み、両者にとって幸福になる取り組みとなるのを期待する。
(2021/2/19 05:00)
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