(2021/7/26 05:00)
大手を中心に社員の副業・兼業を解禁する企業が増えている。経営課題を抱える中小企業が副業者を採用するケースは多いが、課題山積の地方自治体こそ活用すべきだ。
地方自治体で初めて副業者限定の戦略顧問を採用したのは広島県福山市。2018年4月に副業者が着任したという。関西での第1号は大阪府能勢町。大阪府の最北端に位置する人口1万人に満たない町だ。関西初というだけでなく「町」レベルで副業者の採用に踏み切った自治体は全国でも珍しい。5人の戦略プロデューサーと契約し2019年9月にスタートした。
能勢町の基幹産業は農業だが、従事者の高齢化などで耕作放棄地が増えつつある。そこで町は「高度産業化推進プロジェクト」を立ち上げ、外部の知恵を活用することにした。狙いは農業の高度化・高付加価値化だ。
戦略マネージャーはマーケティングや商品開発などの専門家ばかり。さっそく観光物産センターの経営安定化という成果が表れた。物産センターは町の農産物などの貴重な販路になっているが、売り上げは減少傾向にあり、活性化が喫緊の課題だった。マネージャーらとの協働で商品パッケージの一新や町の米を使った「おむすびハウス」の設置など新たな施策が実を結びコロナ禍でも黒字化した。
地方自治体にとって外部人材、特に副業・兼業者との協業には抵抗があっても不思議ではない。職員と副業者とのコミュニケーションがうまくいくとは限らない。また自治体側は早期の成果を求めがちだが、能勢町の場合でも物産センターの成果が顕在化するまで1年かかった。
やはり年単位で考える必要がある。さらに頭を悩ませそうなのは予算の問題。経費の見積もりや副業者の報酬決定など、自治体がこれまで経験したことのない問題が多い。
かつて副業の動機は経済的な問題が中心だった。しかし現在では自身のスキルアップや社会とのつながりを強めたい人が増えている。移住就職にこだわらなければ、都市部の優秀な人材の助けを借りるチャンスだ。
(2021/7/26 05:00)