(2021/10/14 05:00)
鉄鋼大手各社は余剰生産能力を削減すべく、高炉の廃止や拠点の閉鎖など構造改革を進めている。中長期の鋼材需要を見通せば、内需の減退は必至だが、高炉があった地域と引き続きかかわり、育てた人材の流動化や有効活用に尽力すべきだ。
日本製鉄は、9月末に呉地区(広島県呉市)の2高炉、和歌山地区(和歌山市)の1高炉を廃止した。2年後には呉地区自体を閉鎖する。JFEスチールも京浜地区(川崎市川崎区)高炉を廃止、日鉄は2025年春の鹿島地区(茨城県鹿嶋市)の1基廃止を控えている。
足元の需給は自動車減産などがあってもタイトな状況だ。日鉄の橋本英二社長は「受注が極めてタイトだからと、計画を変更するつもりは全くない」と決意が固い。最適な生産体制や高付加価値品の比率向上は各社共通の課題で、日鉄は15基あった国内高炉を25年度までに10基とし、粗鋼能力、人員とも20%削減する。コスト削減効果を引き出し収益力を高める動きは、50年の脱炭素時代を考えればもっともだろう。
注目は過剰能力のそぎ落としを契機に、鋼材価格の是正が進むかだ。実取引で商品価値に見合う金額となっていないケースもあり、顧客とより深い話し合いが必要になりそうだ。橋本社長の「価格是正にきちんとつなげないと(犠牲を払う)従業員や地域の方々に申し訳が立たない」という思いは分かる。
かつては高い稼働率の維持へ、量を輸出に依存する体質もあったが、経済が成長するアジアでは“地産地消”が広がる。各社は海外に成長の活路を求め、合弁や出資で現地生産に乗り出す方向に舵(かじ)を切っている。
ただ国内が、高級鋼生産や開発のマザー拠点であることに変わりはない。
モノづくりを支えるのは人である。各社は地域で人を雇用し育ててきた。協力企業群を含めこれらの人材をどう地域経済に役立てるかは極めて重要だ。鉄鋼各社は、行政と連携しつつ当該地域のモノづくり力や産業構造の高度化に知恵を絞り、今以上の空洞化を回避してほしい。
(2021/10/14 05:00)
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