(2021/12/14 05:00)
税制だけでなく、社会変革を進める政府の力が働かなければ成長は実現しない。
与党の2022年度税制改正大綱は、例年に比べて極めて短い期間で決定した。炭素税の導入や所得控除の見直しなど大きな議論には踏み込まず、小ぶりな内容となった。
メーンのテーマは二つ。一つは「賃上げ促進税制」だ。従業員の賃上げなど一定の要件を満たした企業に税額控除を認める形で法人税を減らす。中小企業には控除率を上乗せする。
2年間の時限措置だが、税制当局は「産業界の求める『使い勝手の良い制度』を作った」と説明する。同時に大企業に対しては「マルチステークホルダー宣言」を求め、成長にシフトすることを期待するという。
岸田文雄首相が提唱する「成長と分配の好循環」への協力を産業界に求めたと言えよう。税制大綱には「経営者自身の意識改革が重要」と明記し、自民党幹部も「この制度で企業が動くかどうかをしっかり見たい」と話す。政府・与党の期待の大きさがうかがえる。
ただ、この賃上げ誘導の狙いが産業界に届くかどうかは疑問だ。コロナ禍の克服が変異株の台頭で不透明になり、経営マインドは警戒に傾いている。また新制度はボーナスの増額でも税額控除の対象となるため、必ずしも一律のベースアップに結びつかないだろう。
22年度税制大綱のもう一つのテーマは住宅ローン控除の見直しだ。控除率を1%から0・7%に圧縮する一方で、期間を最長13年間に延長することを決めた。住宅投資への悪影響を抑えつつ、中長期では持ち家のすそ野を広げる効果があり、妥当な判断といえよう。
「税制だけで世の中を変えることはできない」と政府高官は話す。賃上げ促進税制は、政府・与党にすれば踏み込んだ内容かも知れない。しかし企業を動かす力があるようには見えない。企業に賃上げを求めるだけでなく、デジタル化などの変革をより積極的に進めることで、成長に向けた社会の歯車を回す努力が求められる。
(2021/12/14 05:00)
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