(2022/11/3 05:00)
技術開発と適正利益確保の両面で、官民協調が望ましい。
防衛省は次期通常国会に、自衛隊の装備品の開発・生産のための基盤強化法案を提出する準備を進めている。防衛予算の増額と連動し、サプライチェーン(供給網)やセキュリティー体制を強化する狙いという。
経団連は4月に、防衛産業政策に向けた提言を公表。その中で「防衛産業の育成の観点も含めた装備品調達の基本方針を策定すべき」と注文した。防衛省の新法案はこれに呼応したものであり、東アジアの軍事的緊張が高まる中にあって必要な施策と言えよう。
従来のわが国の装備品調達は、ややもするとコスト圧縮ばかりに目がいっていた。冷戦終結後の防衛予算削減で生産量が減り、利益を確保できなくなって撤退するメーカーも出始めている。政府が防衛産業の育成・支援を強めるのは産業界の希望に合致する。
例えば新法では、装備品メーカーや協力企業に対してサイバー攻撃に備えたシステムの整備を求め、補助金や減税措置を盛り込む方針。装備品専業ではない中小企業などは、自前での整備は難しいのが実情であり「応援する仕組みを作りたい」(防衛装備庁)という。
一方、装備品に関わるサプライチェーンを防衛省が把握すべく、企業の登録を義務づける措置なども検討している。防衛産業全体に国が深く関与することになり、当初は企業側にも戸惑いがあろう。
サプライチェーン把握は他の多くの分野でも必要とされているが、実現に重要なのは発注側と受注側の信頼関係である。経団連は「国産装備品の継続的な調達により予見性を確保する」ことを国に求めている。新たな基盤強化策の具体化にあたっては、防衛省側も十分に配慮してもらいたい。
輸入に頼った高性能の正面装備ではなく、国内に優れた装備品の開発・製造基盤を備えることが日本の存在感を高め、東アジアの安定につながる。官民協調を前提に、新たな仕組みを構築してほしい。
(2022/11/3 05:00)
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