産業春秋／ボージョレ・ヌーボー解禁

きょう１７日はボージョレ・ヌーボーの解禁日。仏ボージョレ地区で醸造されたワインの新酒が色鮮やかなラベルに身を包み、店頭に並ぶ姿は晩秋の風物詩として日本でもすっかり定着した。

時差の関係で本国・フランスより早く飲むことができる話題性やワインブームと相まって、１９８０年代には知名度と消費量が一気に高まった。深夜にカウントダウンイベントが繰り広げられるほどの熱狂ぶりも懐かしい。

ワイナリーによる早出し競争を防ぐ狙いで設けられた解禁日は当初、１１月１５日だった。ただ土日に重なると流通面で支障をきたすため、８５年に１１月の第３木曜日にあらためられ、現在に至る。

８５年はドル高是正に世界が動いたプラザ合意の年。米国の貿易赤字を解消するため、ニューヨークのプラザホテルで開かれた先進５カ国（Ｇ５）財務相・中央銀行総裁会議で合意された。一気に円高が進んだが、輸入品のワインは購入しやすかった。

今年のボージョレ。為替は円安基調にあり、燃料高も重なって価格上昇を余儀なくされた。バブルの記憶に重なる、あの華やかな香りを物価高やコロナ禍第８波の脅威に身を縮めながら味わうことになろうとは。複雑な思いである。