社説/「H2A」打ち上げ成功 日本初の月面着陸で存在感示せ

(2023/9/8 05:00)

日本初の月面着陸を目指す小型探査機などを搭載した「H2Aロケット47号機」が7日、鹿児島県・種子島宇宙センターから打ち上げられた。搭載されたX線天文衛星と小型探査機はそれぞれ予定の軌道に投入され、打ち上げは無事成功した。小型探査機は半年後に月面着陸に挑戦する予定で、成功すれば米国、旧ソ連、中国、インドに続く5カ国目の偉業となる。ミッションを完遂し、宇宙開発をめぐる日本の存在感を高めたい。

国産の大型ロケットの打ち上げは、3月に打ち上げを失敗した新型主力機「H3ロケット初号機」以来になる。今回の47号機は当初5月ごろの打ち上げを予定したが、H3ロケットと共通する部品の調査のため打ち上げを8月に延期。8月も天候を理由に3度延期され、この日を迎えた。失敗を糧に宇宙開発の歩みを進めたものと評価したい。

47号機から放たれた小型探査機「SLIM(スリム)」は3―4カ月後に月の周回軌道に到着し、半年後に月面着陸に挑む見通しだ。着陸が誤差100メートル以内のピンポイント着陸を目指す。これまで着陸目標からの誤差は数キロ―十数キロメートルとされ、これまでの4カ国の実績を上回る高精度技術を世界に誇りたい。

月面着陸をめぐっては、8月11日に打ち上げたロシアが失敗に終わり、インドが同23日に4カ国目の偉業を達成した。日本はインドに続きたい。スリムが取得したデータは米国が主導する人類の月面着陸「アルテミス計画」にも提供される見通しで、中国が宇宙開発で先行しないよう使命を果たしてほしい。

47号機から放たれた、もう一つのX線天文衛星「XRISM(クリズム)」は、X線を使って宇宙の形成過程の解明を目指す。こちらのミッションも円滑に作業が進むことを祈りたい。

宇宙航空研究開発機構(JAXA)と三菱重工業はH2Aロケットで高い打ち上げ成功率を誇り、今回で47機中46機が成功したことになる。H2Aは50号機で運用を終了する。これまでの成功実績を次期基幹ロケット「H3ロケット」への円滑な移行にもつなげてもらいたい。

(2023/9/8 05:00)

総合2のニュース一覧

おすすめコンテンツ

「現場のプロ」×「DXリーダー」を育てる 決定版 学び直しのカイゼン全書

「現場のプロ」×「DXリーダー」を育てる 決定版 学び直しのカイゼン全書

2025年度版 技術士第二次試験「建設部門」<必須科目>論文対策キーワード

2025年度版 技術士第二次試験「建設部門」<必須科目>論文対策キーワード

技術士第二次試験「総合技術監理部門」択一式問題150選&論文試験対策 第3版

技術士第二次試験「総合技術監理部門」択一式問題150選&論文試験対策 第3版

GD&T(幾何公差設計法)活用術

GD&T(幾何公差設計法)活用術

NCプログラムの基礎〜マシニングセンタ編 上巻

NCプログラムの基礎〜マシニングセンタ編 上巻

金属加工シリーズ 研削加工の基礎 上巻

金属加工シリーズ 研削加工の基礎 上巻

Journagram→ Journagramとは

ご存知ですか?記事のご利用について

カレンダーから探す

閲覧ランキング
  • 今日
  • 今週

ソーシャルメディア

電子版からのお知らせ

↓もっと見る

日刊工業新聞社トピックス

セミナースケジュール

イベントスケジュール

もっと見る

PR

おすすめの本・雑誌・DVD

ニュースイッチ

企業リリース Powered by PR TIMES

大規模自然災害時の臨時ID発行はこちら

日刊工業新聞社関連サイト・サービス

マイクリップ機能は会員限定サービスです。

有料購読会員は最大300件の記事を保存することができます。

ログイン