(2023/10/13 12:00)
通商産業省(現経済産業省)の採用面接で印象に残った本を聞かれ、1930年刊行のオルテガ著『大衆の反逆』を挙げた。責任を負わずに権利だけを要求する大衆が出現し、権威主義的な政治が台頭する中で、まっとうなリベラリズムが追いやられると警鐘を鳴らす。誰が責任ある意思決定をし、社会の運営にどう関わるのか。大学時代に読んで強い問題意識を持った。国際場裡(じょうり)で権威主義を包み隠さずにふるまう国がある今日にあって、同著の主張を新たな視点で捉え直さなければいけないと思う。
沼上幹著『組織戦略の考え方』は、組織が陥りがちな病理を分かりやすく説く。中でも「ただ乗り問題」は示唆に富む。
例えば働きやすい職場環境を作るには誰かの努力が必要だが、努力しないでただ乗りする人が出てくる。ただ乗りが蓄積すると努力する人の不満がたまり、組織が腐るという。組織設計の要諦は、皆がモチベーションを持ち続けるには、どうするかにあるとする議論は本質を突いている。官房長として組織や人事をみているが参考になる。
新聞の書評はこまめにチェックする。気になったものを乱読している。最近の本では室橋裕和著『北関東の異界 エスニック国道354号線 絶品メシとリアル日本』が面白い。北関東を横断する国道沿いの各都市にある外国人コミュニティーを軽いタッチでつづっている。身近にこんな多文化共生の世界があるのだと目を開かれた。
『日本列島改造論』(田中角栄著)を復刻版であらためて読んだ。日本を変えようというものすごいエネルギーと構想力に感じ入る。高速交通機関をツールとして使うと日本がどう変わるのかという一大思考実験だ。当時第5世代通信(5G)があったら著者はもっとすごい絵を描いたかもしれない。今、我々は当時より先進的なツールを手にしているはずだが、匹敵する構想ができているのか考えさせられる。
(2023/10/13 12:00)
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