(2023/12/4 12:00)
大林組は建設技能者の不足が懸念される耐火被覆工事で、作業の効率向上や環境改善を狙いにロボット活用を進めている。火災による鉄骨造の建造物の損傷を防止するため、鉄骨表面に耐火被覆処理を施す吹き付け作業を自動化するロボットを開発。省人化をはじめ目に見える効果を確認できた。自社内での活用にとどまらず、他社への貸与など新たな展開を見据えている。
都心の再開発プロジェクトの建設現場。薄暗い空間で2台の装置が高所の梁(はり)へのロックウールの吹き付け作業をひたすら繰り返している。大林組が導入した耐火被覆吹き付けロボットだ。
鉄骨造の建築物では、火災発生時の熱によって梁などの主要構造部が損傷するのを防ぐため、耐火性能が高いロックウールなどで耐火被覆処理を施す。この作業で主に採用される半乾式吹き付けロックウール工法は、吹き付けたロックウールが飛散するため、作業者は防護服や眼鏡、マスクを着用する必要があり、「夏場は特に負担が大きい」(技術本部技術研究所生産技術研究部の池田雄一上級主席技師)。
作業者に強いる負担は、人材を採用しにくい原因の一つにもなっている。建設技能者を確保できないと、その後の仕上げ工事の遅延にもつながりかねない。作業の負担軽減は業界全体の共通テーマとなっている。
こうした課題を解決するツールとして同社が開発に取り組んだのが、耐火被覆吹き付け作業を自動化するロボット。2019年に完成した1号機に続き、23年には小型化・軽量タイプの2号機を完成した。
ロボット活用の効果の一つは省人化。従来は、吹き付け・コテ押さえ・材料の供給をそれぞれ担当する建設技能者3人が1班となり作業を行っていた。吹き付け作業をロボットに置き換えれば担当者1人を減らせる。
ロボットアームや走行装置、昇降装置、横行装置を組み合わせて使うため、全体の作業効率を向上できるのも特徴。従来は吹き付け場所への移動や作業台の昇降などの動作が必要だったのに対し、大幅に改善している。
その一つが1カ所の最大吹き付け幅。建設技能者が作業台を上昇させて作業を行う従来方法では、2メートル程度の範囲に限られていた。一方、ロボットを使えば横行装置で梁の材軸方向にアームをスライドさせることで3・4メートルにまで広がる。
これまで五つの現場にロボットを導入。吹き付け面積は累計で1万平方メートルに達した。ロックウールの飛散量を低減するノズルも開発し、協働する建設技能者が安全に作業できることも確認した。半面、材料の出方によって吹き付けが均一にならないケースがあるため、今後は「材料や工法の変更を検討していく」(同)。
ロボット自体のバージョンアップも計画中。対象部材との距離を正確に認識し、平行な状態で作業できるように機能をさらに向上させた上で、現場への実装を目指す。
(2023/12/4 12:00)
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