(2024/1/15 12:00)
杉松産業(愛知県刈谷市、杉浦正広社長)が、鋳物の中子製造にロボットを導入したのは2014年。以来、試行錯誤を重ね、現在、中子の取り出し作業をロボットに委ねている。「しかしロボットシステムインテグレーター(SIer)がもう少し関心を向けてくれたら、もっと自動化は進む」と杉浦社長は話す。現在、工場の片隅には開発途中のバリ取りロボットが用途を変えて搬送機として活用されている。同社のロボット化構想は道半ばだ。
杉松産業が手がける中子は「シェルモールド工法」を採用している。300度Cに加熱した金型に珪砂などを注入、硬化させて製造する。高精度の鋳物生産が可能になり、自動車のミッションケースやブレーキ部品などに使用される。
自動車産業が電気自動車にシフトしつつあり、既存のエンジン、ミッション関連への投資を控える。「そこに軽量化への拍車がかかり、鋳鉄による鋳物の需要が増える見込みはない」と杉浦社長は言う。さらに採用難が重なり生産の自動化は避けて通れなくなった。
「自動化したい工程がいくつかあって、SIerにアイデアをぶつけて実現してきた」(杉浦社長)。最初に導入したのはエキゾーストマニホールドの中子の取り出し工程。加熱した金型から固められた中子を取り出すのは今でも人手頼み。それをロボットで取り出すことでスピードアップと省人化を図った。
次いで着手したのはバリ取り工程の自動化。ロボットで取り出した中子をバリ取り装置に投入し、検査して出荷を待つ状態にする。「中子の取り出しよりも工数がかかるこの工程こそロボット化したかった」(同)。しかし、SIerが中子をカメラで捉えてバリ取り箇所を検出するプログラムを完成させることができずに頓挫した。カメラ、研磨装置はついた間、稼働せず、現在は手作業で行うバリ取り作業場に運ぶだけの機械になっている。
「開発が頓挫したのは鋳物業界への理解不足が根底にある」と杉浦社長は考える。鋳物業界はロボットの市場としては小さく、汎用性も乏しい。このためSIerが本気で取り組もうとしない。
現在、ディスクブレーキ部品の中子の取り出し工程でロボットを導入している。先のエキゾーストマニホールドの中子製造が金型を垂直に割って製造するのに対して、ディスクブレーキ部品は金型を水平に割って中子を取り出す。このわずかな生産技術の差でも実用化に苦労を重ねたが「これでも不十分」と杉浦社長は納得していない。
24年春、愛知県安城市に新工場を立ち上げる。そこにはロボットの操作を学べる「ロボットトレーナー」を導入する計画だ。「社員にロボットを勉強してもらい、自分たちでシステム化できるようにしたい」(同)。基礎知識からプログラミング、さらにはロボットやカメラの操作までを社内で習得する。
24年は創業から60年を迎える。これまで蓄積してきたノウハウを自らの手でロボットに移植して、生産ラインに生かす日も遠くはない。「将来は鋳物業界のロボットSIerになれたら」(同)と未来の姿を描く。
(2024/1/15 12:00)
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