(2024/1/15 12:00)
硬質クロムメッキは加工対象物(ワーク)の表面を硬化し、耐摩耗性や耐食性を高め、摩擦係数を下げる。金属製品での用途は幅広い。しかし、工程で使う六価クロムはもちろん他のクロム化合物も欧州をはじめ世界で規制強化の流れにある。豊実精工(岐阜県富加町、今泉由紀雄社長)は、クロムフリーの表面処理技術「エリン」で代替と差別化を訴える。
エリンは直径1マイクロ―3マイクロメートル(マイクロは100万分の1)の酸化アルミニウム微粒子を常温・真空中でワークに高速でぶつけ、ワークと化学結合したセラミックス被膜を形成する。産業技術総合研究所の基本技術を、3次元形状に均一に処理できるよう進化させた。
膜厚は1マイクロ―2マイクロメートルと硬質クロムメッキの数分の1で耐食性はより高い。ビッカース硬さ1200―1500と硬く耐摩耗性は約3倍だ。耐熱性、絶縁性も高い。部品の小型化、ステンレスから鉄やアルミニウムへの材料変更も期待できる。
岐阜県下呂市、山形県米沢市、福井県大野市の3工場で2022年末に量産を始め、プリント基板実装機や食品機械の部品に採用された。滑りやすさを生かしフィルム成形用のローラー、リニアガイドの摺動(しゅうどう)部、ロボット用減速機の歯車、ボールネジなどにも売り込み中。ダイヤモンドライクカーボン(DLC)とコストは同等、性能は優位で「まずDLCの代替に」と今泉亮太郎専務は話す。
現在対応できるワークは最長1メートルだ。24年3月までに大野市の工場で設備を改良して1・6メートルまで対応可能とする。ローラーやリニアガイド向けだ。さらに「4―5メートルが処理できる専用機も開発する」(今泉専務)計画だ。
設備の提供も交渉中だ。ワークに最適な原料微粒子や加工ノウハウと合わせ課題解決策を提案する。クロム規制で先行するドイツのメーカーなどとも商談やテスト加工を始めた。要素技術や生産技術の強化も進める。新機能の追加や生産性向上で個別用途により最適なエリンを提供する。
(2024/1/15 12:00)
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