(2024/2/22 12:00)
マリモ電子工業(長野県上田市、清水久夫社長)は人工知能(AI)を活用し、農作物を野生動物から守る「AI鳥害防止システム」の開発を進めている。全国で発生する鳥獣による農作物被害への対策で、飛行ロボット(ドローン)と組み合わせて鳥を追い払う。鳥の検出から追い払いまで自動で行うため、人手不足の解決にも貢献する。2026年度の社会実装を目指す。
マリモ電子工業はソフトウエア開発やハードウエアの設計開発などを手がける。開発中のAI鳥害防止システムは、設置したエッジデバイスが深層学習で鳥を検知し、ドローンを格納したステーションと連動したセントラルデバイスに無線で鳥の位置情報を送信する。データを受け取った後、充電機能を備えるステーションからドローンが発進し、鳥がいる場所へ移動して音や光などで追い払う。ドローンはステーションを中心に半径5キロメートル圏内を移動する。
エッジデバイスはカメラと画像解析用デバイス、無線機とソーラーバッテリーで構成。設置箇所を柔軟に変更でき、被害の多い場所を選んで設置できる。複数箇所への設置も可能だ。
従来の鳥害対策装置では、鳥が慣れると忌避効果が下がるのが課題だった。そこで同社は鳥の慣れを踏まえ、効果を維持できる追い払いパターンを研究している。
AIによる画像処理の課題は屋外での鳥の検出だ。技術部の尾関竣哉氏は「画像から鳥を検出する際、対象の動きや天候によって検出精度が変化することがある」と話す。この課題を、主に土木分野の画像解析で用いる、画像に加工を施して検出しやすくする技術を応用して解決に挑んでいる。
マリモ電子工業は信州大学から相談を受け、今回のシステム開発を始めた。農研機構生物系特定産業技術研究支援センターが出資する「イノベーション創出強化研究推進事業」の一環で、同大に加えて岐阜大学、長野工業高等専門学校と連携して研究を続けている。同社は長野県のIT産業振興に取り組む「信州ITバレー構想」にも参画している。
農林水産省の調査では21年度の全国の野生鳥獣による農作物被害は約155億円に上る。AI鳥害防止システムは機材原価だけで数百万円だが、被害を抑制できれば十分な経済効果がある。獣害や盗難被害防止への応用も視野に入れており、「省力化やコストダウンを可能な限り実現したい」(尾関氏)としている。
(2024/2/22 12:00)
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