(2024/3/21 12:00)
前川製作所(東京都江東区、前川真社長)は、食肉用の豚肉から骨を抜き取る除骨ロボット3種類に人工知能(AI)を搭載している。ロボットを用いてナイフで切る際、AIを使うことで肉部分の取りこぼしを減らせる。導入した食肉加工工場では生産性の向上につながっているという。今後もAIを活用した食肉加工設備を開発し、生産性向上や重労働における人手不足といった食肉加工業界の課題解決に向き合う。
長野県佐久市の佐久工場で除骨ロボットを開発している。AIに対応しているのは豚もも部位自動除骨ロボット「ハムダス―RX」と、豚腕部位自動除骨ロボット「ワンダス―RX」、一つのハードウエア上で豚の肩・腕・もも・ロースなどの多品種の原料や処理仕様に対応する「セルダス」の3種類。
例えば2021年に開発したセルダスの場合、6軸ロボット3台で一つのブロック肉(部位)から骨を取り除く。豚もも肉の寛骨・尾骨除骨作業は1本当たりの処理速度が平均40秒と、人を介した作業と同等のスピードを確保する。
セルダスは認識ユニットとロボット作業ユニット、双方をつなぐコンベヤーで構成する。投入したブロック肉はまず認識ユニットにおいて、エックス線(X線)で骨の配置を撮ってから3次元(3D)カメラで3D外形画像を取得する。3DとX線それぞれのデータをAIが解析。2データを組み合わせ骨の座標を特定し、除骨作業をするロボット作業ユニットに送る。搬送時に位置ずれがあるため、同ユニットで改めて肉の立体形状を測り、ナイフを入れる軌道を計算。ロボットは座標軸に応じてナイフで除骨する。
他にもセルダスのAI機能を使って、豚肉の部位がももなのか腕なのかどうか種類を判別するために使われるほか、測定したデータが正しく座標を検出できているかの良否判定にも用いる。開発に携わったモノづくり事業本部の海野達哉専任次長は従来の機械に比べてAI搭載機は「骨に沿ってきれいに切れるため、歩留まりが上がっている」と利点を話す。
これまでに世界でAI搭載のハムダス―RXを5台、ワンダス―RXを1台提供し、セルダスは現在欧州で1台がテスト販売中という。価格は高いが人手不足が進む社会では需要があるとみる。佐久工場の構敏和工場長は「画像認識のところで他設備にもAI展開を予定する」としており、開発に必要なAI人材の採用も進める。
(2024/3/21 12:00)
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