(2024/3/22 12:00)
横河電機は計測・制御大手の知見を生かし、新規事業として宇宙ビジネスに取り組んでいる。月面の水を探査する装置を開発済みで、将来の月面資源開発に活用されることを狙う。宇宙ビジネスの本場の欧米の企業や団体との連携にも取り組む。
横河電機は顧客のプラントの安定操業を支えてきた。2019年に宇宙事業参入の検討を開始。21年の準備室を経て22年に宇宙事業開発室を設立した。月面に水があると判明し、月面探査に狙いを定めた。水は電気分解して水素を製造し、発電などに利用できる。
そこで、酸素やメタンを計測するレーザーガス分析計を応用し、千代田化工建設と共同で水探査装置を開発した。月面のどの位置、どれほどの深さに水があるかを確認する。
将来の月面探査に同装置を提供するほか、制御システムの知見を生かし、月面プラントの制御も狙う。月面で水素の製造から利用までの各工程を担うプラントが建設された時、地上から遠隔で制御する構想だ。
実現に向け、日揮グローバル(横浜市西区)と23年12月に共同開発契約を結んだ。宇宙航空研究開発機構(JAXA)が月面の水資源を利用した水素・酸素供給プラント構想を具体化した時、制御システムの受注を目指す。
東京・有明の東京ビッグサイトで2月に開かれた「2024国際宇宙産業展 ISIEX」で、横河電は月面プラントの遠隔制御のデモを公開した。水から水素や酸素を製造するプラントを地上から数秒の遅延を考慮して制御するゲーム形式で、来場者が楽しめるようにした。
ブースは日揮グローバルと共同出展で、両社の宇宙関連の活動を1カ所で把握できるようにした。同社をはじめ日揮ホールディングス(HD)はプラントの設計・調達・建設(EPC)を遂行する。横河電の白津英仁宇宙事業開発室室長は「プラントを一緒に手がけるパートナーであり、話も良く通じる」と良好な関係を説く。宇宙でも、地上での連携の再現を図る。
欧米勢とは起業家ジェフ・ベゾス氏が00年創業した米ブルーオリジンと協業する。日本企業との協業は初という。同社は商業宇宙ステーション「オービタル・リーフ」の20年代後半の運用開始を目指しており、ライフサイエンス製品を供給する狙いだ。国際宇宙ステーション(ISS)の日本実験棟「きぼう」向けに、宇宙実験用顕微鏡システムの中核の共焦点スキャナーを納入した実績があり、同様の事例を目指す。
一方、米航空宇宙局(NASA)の月面の資源利用に向けた民間技術の案件募集に応募した。NASAは今夏に具体的な要求を出す予定で、水探査装置を中心に回答する見通しだ。NASAの資源探査への採用を狙う。
このほか、欧州の宇宙開発を目指す企業団体「EURO2MOON」に加盟した。仏産業ガス大手エア・リキードなど加盟企業に探査装置などの供給を目指す。
(2024/3/22 12:00)
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