(2024/3/22 12:00)
人生の節目ごとに、企業経営の道標となる一冊に出会ってきた。20代で起業し、事業を軌道に乗せることに奮闘していた時代は松下幸之助氏に関する作品に多く触れ、経営理念やその根底にある考えに深く共感した。それから半世紀余り。今の私を後押しする一冊はビジネスパーソンからの支持を得てベストセラーになったチャールズ・オライリー著『両利きの経営』だ。
同書の読者の多くはこの中で提唱される経営理論を自身の経営改革の原動力として実践することを目指すだろう。しかし、私の受け止めは、やや異なる。企業成長の局面や事業環境の変化に直面し、これまで下してきたさまざまな経営判断が肯定され、勇気を与えられ、さらには理論的に裏付けてくれるように感じるからだ。
イノベーションの時代には、既存事業を「深化」し収益力や競争力をより強固にする経営と、新たな成長機会を「探索」しビジネスとして確立する経営の双方が求められ、これを「両利き」と称する。私自身、こうしたアプローチを意識し始めたのは売上高の100億円超えが射程に入った頃。電気設備や通信設備を中心に培ってきたエンジニアリング力には自信がある。海外市場でも実績を積み重ねてきた。だが、成長スピードを鈍化させることなく収益力を高め、社員や株主に還元するには、産業構造が異なる事業の確立が必要と痛感した。具現化したのが不動産事業だ。ノウハウ蓄積の過程では苦い経験もあったが、それも生きている。
組織文化に関する考察も新鮮だった。国内外問わず企業のM&A(合併・買収)を積極的に進めており、相乗効果の発揮が課題の一つだからだ。日本企業の多くは文化を戦略的につくり込んでおらず、これを成長力に転嫁する組織能力の変容には経営トップが深く関与すべきという指摘は示唆に富む。
家族的な雰囲気を大切にする当社の良き企業風土は守りつつ、さらなる変革に挑みたい。
(2024/3/22 12:00)
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