インタビュー/日本タングステン取締役常務執行役員・毛利茂樹氏 再生原料増やし中国産依存脱却

(2024/4/18 12:00)

ー希少金属のタングステンを用いる製品を主力としています。

「タングステンの原産国として中国にほとんどを頼る状況で、一国集中の地政学的リスクが大きくなっている。以前、輸入の際に留め置かれて支障が出たこともある。ある程度の在庫は持つが、それだけでは資金が出ていく一方になる。リサイクル材の利用を含めて、原産国や調達先を分散する方向にある」

ー想定する原産国はどこですか。

「英国やブラジル、韓国で鉱山再開が見込まれていると聞く。中国産の安さに対抗できずに閉山したが、価格水準が上がったことで採算を取れるようになったのではないか。併せて日本での調達も増やしていきたい」

ー国内での調達は。

「リサイクル原料の調達拡大だ。当社では現状、タングステン関連の使用量の約17%を再生原料が占める。数年で20%程度までは高められるとみている。現在も当社から出る廃材は再生に回っているが、これを機に原料メーカーとの連携も強めたい。日本の廃材を韓国などで再生する枠組みもできると聞いており、そちらも考えたい。他方でリサイクル材は価格がまだ高い。タングステンの調達全体では安定性と価格のバランスが重要になる」

ータングステン以外の原料で課題は。

「インパクトが大きいのは電気接点に用いる銀だ。価格が金に連動しやすい。受発注の時期が大きくずれると収益に影響してくる。短期間での受発注や、変動分の差額を顧客に支払ってもらう取り組みを実施している」

  • 炭化タングステンを主原料とする超硬合金製のダイカッターユニット。衛生用品の切断加工に用いる

ー調達には環境配慮も求められています。

「当社のグリーン調達ガイドラインを調達先に送るほか、アンケートに協力してもらっている。人権尊重を重視する顧客も増えた」

ー本社と3工場で使用する電力の全量を、再生可能エネルギー由来に切り替えました。

「脱炭素化を推進する上で、火力電源への依存を下げることが大きな理由の一つだ。また生産工程の省エネ化の研究も進めているが、技術確立には10年かかる。企業の社会的責任を果たすため、費用はかかるが、まず再生エネに移行した」

(2024/4/18 12:00)

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