産業春秋／入管法改正案「選ばれる国」になるのか

外国人材の長期就労につなげる「育成就労」制度の創設を柱とする入管難民法などの改正案の審議が参院で始まった。途上国への技術移転を掲げた「技能実習」を廃止し、人材確保と育成に主眼を置く。

外国人材の受け入れ拡大にかじを切る転換点となる。ただ法案には日本が就労先として真に「選ばれる国」になるのか不安視させる規定が盛り込まれた。永住を目指す人が増えることを見据え、税や社会保険料を故意に支払わないなど悪質な場合に限り、永住許可の取り消しを可能とする。

「故意」の解釈や運用をめぐり疑念の声が相次ぐ。そもそも法案化に向けては有識者会議で議論が尽くされてきた。にもかかわらず、ほぼ論点とならなかった「永住許可」に関わる極めて重い規定が突如、盛り込まれた。

外国人材に対する自民党内の価値観が多様であることをうかがわせる。深刻化する人手不足にようやく正面から向かい始めたが、その効果が薄れないか心配になる。

国際的な人材争奪戦は激化し、韓国や台湾は柔軟な制度運用や高い賃金で外国人を引き付けている。現場の業務を外国人に頼りたい国内産業の人材獲得に影響を及ぼさないだろうか。法案の行方を見守りたい。