産業春秋／都知事選、日本の未来どう描く

東京都庁の知事応接室。普通のオフィスなら２フロア分ほどの高い天井を取り囲む壁に歴代知事の写真がずらり並ぶ。主を決める選挙の告示を６月２０日に控え、動静が慌ただしくなってきた。

結果はその後の国政にも影響を与えるだけに、各党は候補者擁立や出馬表明のタイミングに神経をとがらせる。政界だけでなく、著名人が名乗りを上げるのも都知事選の特徴だ。

都の財政規模は約１６兆円。スウェーデンやチェコの国家予算に匹敵する。これを背にした施策運営は日本の経済成長に直結する。グリーンやデジタルを軸に繰り広げられる世界の都市間競争を勝ち抜くには、大局的な視点で戦略を練り上げる姿勢が欠かせない。

日本が直面する課題を映す縮図でもある。少子化にどう歯止めをかけるのか、激甚化する災害への備えは万全か。老朽化が進む社会インフラを誰がどう守るのか。強靱（きょうじん）で持続可能な都市を実現するために講じなければならない施策は山積する。

その裏付けとなる財源を安定的に確保する財政運営をめぐっては、国と地方のあるべき姿といった本質的な課題も立ちはだかる。選挙戦の構図はまもなく明らかになる。行方は都民ならずとも目が離せない。