社説/「中堅企業」新設 重点支援で「国内」投資に弾みを

(2024/6/3 05:00)

改正産業競争力強化法が5月31日に成立した。従業員2000人以下の企業を「中堅企業」と法的に位置付け、補助金や優遇税制で支援する。中堅企業は給与や従業員の伸び率で大企業を上回る。中堅企業が多く立地する地方で持続的賃上げや国内投資が促される効果を狙う。中小企業へのM&A(合併・買収)によるグループ化も後押しする。中堅企業が中小企業の労働移動の受け皿となり、産業の新陳代謝も進むと期待したい。

「中堅企業」は約9000社が対象になる。中小企業が租税特別措置などで優遇されるのに対し、中堅企業は大企業と同等の扱いだった。曖昧だった中堅企業の位置付けを明確化し、中堅企業に的を絞った支援策を講じる。大企業はこの10年、海外事業の拡大を進めた一方、中堅企業は海外と同時に国内投資にも目配りしてきた。中堅企業を支援することで「国内」での投資が拡大し、持続的に賃金が引き上がる効果を引き出したい。

大企業は海外投資で得た利益を国内に還流させず、海外で再投資するケースが多い。この経常収支の構造は円安の一因でもある。成長の伸びしろが大きい中堅企業の国内投資を促すことで、日本経済は持続的な成長の実現に向け弾みを付けたい。

中堅企業への支援策は、工場の新設などへの補助、意欲的な賃上げや中小企業へのM&Aを後押しする優遇税制の適用、販路拡大への支援など。24年度当初予算案と税制改正から措置し、「中堅企業元年」として重点支援する。産業界の低い生産性を引き上げる契機としたい。

中小企業の間では優遇措置を受けるため、企業規模をあえて抑える向きもある。中堅企業への支援が強化されることで、中小企業が中堅企業への規模拡大を目指す効果にも期待したい。

日本経済は大きな転換期を迎えつつある。賃金も物価も金利も上昇する拡大均衡の経済は、企業に収益構造の一段の強化を迫る。中でも体力で劣る中小企業の経営環境は厳しくなる。中堅企業による中小のグループ化も選択肢に、日本経済は新たな成長ステージに移行したい。

(2024/6/3 05:00)

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