社説/24年版「通商白書」 円安追い風に「直接輸出」拡大を

(2024/7/10 05:00)

政府は9日、2024年版通商白書を公表した。日本は円安が進んだわりに輸出数量が伸び悩んでいる点に着目。輸出企業に中間部品などを納品し、間接的に輸出に携わる中堅・中小企業に対し、中間部品の直接輸出を促す。ただ、これら「間接輸出企業」に輸出拡大の潜在能力がある一方、人材などの経営資源や情報・ノウハウに課題があるとも指摘する。政府には、これら課題を乗り越える効果的な支援を講じてもらいたい。

財務省がまとめた5月の貿易統計によると、輸出額は前年同月比13・5%増の8・3兆円と6カ月連続で増えた一方、輸出数量は同0・9%減と4カ月連続で減った。円安効果を生かし切れておらず、日本企業の輸出競争力の強化が大きな課題だ。

白書によると、間接輸出企業は製造業の8割を占める。例えば、自動車メーカーに電気自動車(EV)用バッテリーを納品している企業が、バッテリー単体を新規に直接輸出できれば輸出数量増を期待できる。だが間接輸出企業の過半が今後の事業展開は「現状維持」とし、直接輸出に必要な人材確保や社内体制の整備、情報やノウハウ不足などを不安視する。白書は、これらリスクへの支援が課題としており、当該企業に寄り添った施策の構築を急いでほしい。

政府は22年12月から日本貿易振興機構(ジェトロ)などと連携し、初めて輸出に取り組む中小企業などを支援する「新規輸出1万者支援プログラム」を始めている。海外事業戦略の策定や国内商社とのマッチング、社内人材の育成、海外展開に必要な資金などを支援。4月末時点で約1・7万者が登録し、2240者の輸出が実現している。こうした成果も参考に、間接輸出企業の直接輸出を促したい。

白書は、世界の分断により保護主義が台頭する中、同志国と「透明・強靱(きょうじん)で持続可能なサプライチェーン(供給網)」を構築する重要性も強調した。中国を念頭に特定の国への依存を緩和し、輸入元を分散させる重要性を説く。高成長のグローバルサウスを取り込みつつ、国際貿易秩序の再構築を急ぎたい。

(2024/7/10 05:00)

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