社説/中国の行方(上)米欧との貿易摩擦が減速を招く

(2024/7/19 05:00)

中国による電気自動車(EV)や太陽光パネルの過剰生産に対し、先進7カ国(G7)は連携して監視を強化し、対処することを決めた。中国政府の補助金を受け、過剰生産された廉価な中国製品が公正な競争を阻害しているとの判断だ。すでに米欧は中国から輸出されるEVなどへの関税引き上げを決めている。米欧と中国の貿易摩擦が、軟着陸を目指す世界経済に影響を及ぼさないか注視したい。

イタリア南部ビラサンジョバンニで開かれていた先進7カ国(G7)貿易相会合は17日、中国を念頭に「有害で非市場的な過剰生産に対処する」との共同声明を採択し閉幕した。中国が重要鉱物の輸出を制限する経済的威圧への監視も強化し、サプライチェーン(供給網)の混乱を回避することで合意した。

不当に廉価な中国製品は世界の市場を混乱させるだけに、G7の対応は適切だ。重要鉱物についても経済安全保障の観点から、中国依存は緩和したい。ただ貿易摩擦は世界貿易機関(WTO)で解決するのが本筋であり、今回のG7会合で指摘されたWTOの機能回復についても引き続き議論を深めてほしい。

EUはG7会合に先立ち、5日から中国製EVに最大37・6%の相殺関税を課している。11月までに最終措置の結論を出す予定だ。中国のEV輸出の4割がEU向けとされており、外需依存に傾く中国への影響は小さくない。一方、EUにとって中国は最大の輸入相手国であり、今回の摩擦がEU経済に及ぼす影響も注視する必要がある。

バイデン米政権も8月、中国製EVへの制裁関税の大幅な引き上げなどを予定する。EUと同様に中国の過剰生産への対抗措置だが、米国では中国製EVはほとんど流通していない。大統領選を見据えた国内向けのアピールであるのは明らかで、過度な保護貿易は戒めたい。

トランプ氏の大統領再選となれば、中国製品への一律60%の関税が検討される。中国経済の減速が世界経済に多大な影響を及ぼしかねない。米中の報復の連鎖が再燃すると想定され、大統領選の行方には警戒したい。

(2024/7/19 05:00)

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