(2024/7/30 12:00)
ジェイテクトは電動パワーステアリング(EPS)を製造する奈良工場(奈良県橿原市)において、女性やシニアの作業者が働きやすい生産ラインの構築を進めている。エルゴノミクス(人間工学)に基づき、容易に部材を取り出せる装置を製作したり、楽な姿勢で作業ができる工夫を凝らしたりして負担が少なく作業ができる環境づくりを追求。多様性に対応するモノづくり現場を育んでいる。
奈良工場では2018年から、軽自動車向けのEPSを作るラインで働く作業者を女性とシニアに限定する試みを実施。女性でも動きやすいように作業台を低くするといった女性とシニアの体格や腕力などを考慮した作業環境の改善を推進した。
現在は軽自動車向けの生産量が少ないことと、自動化による省人化が進み、このラインに従事する作業者が減っているため、女性・シニア限定の条件はなくした。だが、「女性やシニアの方が働きやすい職場というコンセプトは変えていない」(甲斐哲治工場長)。女性やシニアでも容易に仕事ができるように、作業負担を減らすための改善は続いている。
このライン構築にあたりエルゴノミクスに基づいて、作業の“煩わしさ”の数値化を行った。一つの工程にかかる作業者の歩行距離や手を出す回数、器用さが求められる作業などにポイントを付けて加算し、それをサイクルタイムで割り算する。
これで同じポイントの作業でも、サイクルタイムが短い工程はより煩わしく、長い工程にはゆとりがあることが分かる。ポイントが高い煩わしい工程から、その原因の作業に焦点を当てて改善をしていった。例えば、板状の部材を箱の中から1枚だけを取り出すという器用さが必要な作業は、取り出し用の装置を作り、煩わしさを解消した。
また、作業者がかがんだり手を伸ばしたりといった姿勢を大きく変えることをせずに作業ができる位置を「ストライクゾーン」と設定。それらの位置に部材を置くことを進めた。手に取る部材の位置をからくりを使って、ストライクゾーンの中に収めるようにするなどの工夫で、このラインでは「ほぼ完璧にストライクゾーンに入っている」(藤川昇一郞奈良工場第1製造部長)。
これらの工夫の根底にあるのは「器用さが必要な工程は、誰でもできるように変える」(同)との考えだ。「誰もができる」ことが省力化とともに多様性への対応のカギといえそうだ。
(2024/7/30 12:00)
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