産業春秋／中小M＆Aトラブルを防げ

中小企業Ｍ＆Ａ（買収・合併）から悪質な買い手企業を締め出せるか。Ｍ＆Ａ仲介協会は１０月から、悪質だと判断した買い手企業をリスト化する。およそ１００社の会員が検索できるようにし、仲介しないよう呼びかける。

発端は、東京に本社を置く投資会社が、買収した企業から資金だけを吸い上げ、負債を残したまま連絡を絶つということを３０社以上繰り返したことにある。すぐに発覚しないよう、いくつもの仲介業者を渡り歩いて行い、被害が広がった。

中小企業Ｍ＆Ａにおいて、仲介業者は売買双方の経営や財務状況を調査するが、売り手の方に重きを置く傾向があるという。売り物になるかを見極めるためだ。市場は買い手の方が多いことも背景にある。

この状況に中小企業庁は、中小Ｍ＆Ａガイドラインを改定した。買い手に事業を引き継ぐ能力があるかを仲介業者が調査し、売り手に事前説明することなどを義務付けている。２０２５年１月から適用する。

秀でた技術、製品・サービスを有する中小企業の事業承継は、産業界の課題だ。企業経営者の高齢化が進む中、Ｍ＆Ａ仲介に対するニーズは増す。仲介業者はトラブル防止に向け、より一層の注意を払ってほしい。