(2024/9/12 12:00)
愛知県が2024年度から燃料電池(FC)トラックを商品輸送に活用する事業を進めている。その一環で、24年度内にワタミが県内で弁当の配送と、弁当容器のリサイクルなどの際の運送でFCトラックを用いる試験を始める予定。生産者から消費者にモノを流す動脈物流と、その逆の静脈物流で二酸化炭素(CO2)を削減し、サプライチェーン(供給網)の脱炭素化を狙う。愛知県はこの試みを基に物流の脱炭素化モデル構築を狙う。
ワタミの食品加工工場「ワタミ手づくり厨房 中京センター」(愛知県津島市)。再生可能エネルギーを利用したり、弁当の容器や調理くずなどを自社で回収し、リサイクルする仕組みを構築したりして環境負荷の低減に取り組んでいる。ただ、物流の脱炭素化は進んでいなかった。
「目に見える部分だけでなく目に見えない部分でも、CO2排出量削減に努めたい」(ワタミ仕入開発本部)との思いから、同社は脱炭素化のアイデアを募っていた愛知県に、動脈を担うムロオ(広島県呉市)、静脈を担う三和清掃(愛知県小牧市)とともに、同工場の物流でFCトラックを使うことを提案。これを県が採用し支援する。
今回、FCトラックのCO2削減効果や輸送効率を検証するとともに、運送ルートなどでモデルとなる枠組みを作る。例えば、深夜の弁当配送時に、開店時間が昼間に限られる水素ステーションで燃料供給をするのに「どうすればダウンタイム(停止・中断)がなくなるかを分析している」(愛知県環境局地球温暖化対策課)。こうした調整の後、24年度内の実証にこぎつける考えだ。また県が、荷主や運送業者が参画する「あいち物流脱炭素化推進会議」を設立し、実証で浮かんだ課題を県内の荷主や運送業者に横展開する予定。
FCトラックを動かす運送業者が課題と捉えているのはコスト。三和清掃の佐野利秀業務統括部長は「FCトラック自体が高価」と語る。FCトラックの2トン車の価格はディーゼル車の5―6倍ほど。燃料代もムロオの中島真也名古屋支店長は「最低でも2倍ぐらい高い」と指摘する。これらの障害を越え、採算性を高めるモデル作りが焦点だ。
しかし、燃料電池車(FCV)は航続距離や燃料充填時間などで電気自動車(EV)より優位だ。ディーゼル車からの代替について中島名古屋支店長は「EVより可能性はかなりある」と語る。物流新ステージの主役にFCVトラックが躍り出るか。愛知県での試みが注目される。
(2024/9/12 12:00)
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