障がい者と利益出す 堀江車輌電装、ビルメンテで実現 業容拡大

(2024/10/1 12:00)

  • 小学校で行われた「ユニバーサル野球」

鉄道車両の検査・整備が本業の堀江車輌電装(東京都千代田区)には、もう一つの顔がある。障がい者の雇用を支援する事業や、障がい者と健常者が一緒にプレーできる独自の「ユニバーサル野球」事業を運営し、ともにビジネスとして成立させている点だ。そこには「単なるボランティアでは長続きしない」という堀江泰社長の強い思いがある。

障がい者との関わりは、2012年に4代目に就任したばかりの堀江社長が知的障がい者サッカーの国際大会を見て、感動したのが始まり。日本代表チームを支援するうちに「実は就職先がない」という現実を知った。

そこで14年に障がい者支援事業部を創設。社会福祉士の荻野真奈美氏(現部長)をスカウトし、企業向けに人材紹介やコンサルティングを始めた。障がい者が学ぶ特別支援学校や、障がい者雇用を求める企業との関係構築に力を注いだ。

現在は年間100―200人の障がい者が登録し、うち同10―20人が就職する。堀江社長は「身体障がい者は引く手あまただが、我々が支援する知的障がい者や精神障がい者は企業側の選考のハードルが高い」と話す。

一方、自社でも障がい者雇用を始めた。きっかけは事業継続が難しくなったビルメンテナンス企業を16年に買収し、同事業に進出したことだ。ビルの清掃作業は、障がい者と相性が良く、ビルメンテナンス事業部の従業員23人中5人が占める。支援事業部も3人中1人が障がい者だ。

ビルの清掃ノウハウを獲得したことで、西武鉄道の特急車両「ラビュー」や工場の清掃作業を受注した。鉄道会社は駅や商業施設、ホテルなどを運営しており、この分野への参入も視野に入れる。

障がい者が後輩を教育するようになったのも注目点だ。被害妄想や幻覚に悩まされる統合失調症を26歳で発症したビルメンテナンス事業部の森下慶祐副主任は仕事のかたわら、企業や学校で講演活動も行っている。

  • 松井秀喜氏のサインボールを手にする堀江社長(中央)、荻野氏(左)、森下氏

19年には「ユニバーサル野球」も始めた。野球盤の巨大バージョンで、脳性まひの小学生の願いをかなえるため、可動域が1センチメートルあればプレーできるよう設計した。これまでに学校や自治体のイベントなどで75試合を運営しており、4月には元ヤンキースの松井秀喜氏も参加してニューヨークで開いた。

堀江社長が就任した13年の年商は約1億7000万円で、社員は15人。10年後の23年には各6億円弱、68人に拡大した。障がい者雇用は業容拡大につながったのである。

(2024/10/1 12:00)

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