産業春秋/ノーベル3賞ならず、研究現場の人材不足に懸念

(2024/10/16 05:00)

ノーベル賞は、日本が得意とする自然科学系での受賞が3年連続でなかった。日本の研究環境の問題が指摘されるが、その中で研究現場の人材不足も悩みの種となっている。

新たな材料の開発には候補となる素材の探索、データ収集、実験、結果の解析、検証が繰り返される。そうして絞り込んでいくが、あるメーカーの研究者は「業界を大きく変えるような新素材の開発は、実現するまでに10年、20年かかる」と吐露する。

目指すところにたどり着くまでには多くの時間と作業を要する。研究者だけでなく、研究を支える技術者が必要だ。ただ人口減に加えて、理工系の学部生や高等専門学校生の大学院進学が増え、技術者の担い手は不足している。

とはいえ、問題に対処する術(すべ)はある。人工知能(AI)を活用し、材料データからさまざまな機能を予測する技術、特許や文献などから関連する事項を効率的に収集する技術などが開発されている。

早稲田大学と島津製作所が包括連携協定を結んだ。博士号の取得で協力するほか、支える技術職員100人に高度解析技術を習得させるという。研究を効率化する技術や人材育成のさまざまな取り組みが、大きく実を結ぶことに期待する。

(2024/10/16 05:00)

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