(2024/11/6 12:00)
ノウハウ見せず技術守る
仲代金属(東京都足立区、安中茂社長)は、もろくて細長く切るのが難しいとされるアモルファス(非晶質)合金のスリット加工に業界で初めて成功した企業。その高い技術を支える基礎は①加工する機械②切る刃物③刃の組み方―の三つだという。その上で、創業後50年間にわたり「何をどう切るのか」「刃物の種類」「刃の使い方」などを記録してきた数千枚に及ぶ専用シートが、他に代えがたい“宝”と位置付ける。
1974年の創業以来一貫して、金属箔を細く正確に「切る」技術を追求してきた仲代金属。その生産ラインの最大の特徴は、加工する機械を全て自社設計している点だ。
「市販されているそのままの機械は1台もない」と桒原(くわばら)大樹取締役。市販機でも大幅に改造したり、発注時点で改良を指示したりするのが当たり前だという。
発注した機械が工場に到着したら、機械メーカーの担当者には帰ってもらう。それから機械を生産ラインに組み込む。発注先にも絶対に生産ラインを見せないことが、独自の生産技術を守るカギと考えているからだ。
導入前には安中社長自ら発注先の工場に出向き、テストを繰り返す。出荷前の機械にフル荷重をかけて何時間も回し続けるなど「機械をいじめていじめ抜く」(安中社長)ためだ。
こうした方針を採るのは、生産ラインを見せた結果、製造方法を盗まれた経験があるからだ。「数多くの失敗を繰り返してきた」と安中社長は振り返る。
第2の特徴は刃物だ。刃もオーダーメードで調合しており、材質と寸法で600種類超に上る。材料と相性が悪いと簡単に欠けてしまうため、刃の種類と何をどう切ったか、その結果はどうだったかをその都度、専用シートに記録している。
創業後50年間の“成功”と“失敗”の歴史が刻まれ「今からつくろうにも最低10年はかかるだろう」と安中社長。顧客ごとに冊子化し、生産ラインの近くに置いて、いつでも確認できる体制を築く。
特徴の第3は「刃組み」だ。同業他社は1―2種類の組み方しかないのに対し、安中社長が考案した組み方は13通りに上る。刃をどう使うかの技法は重要といえ、刃組みの豊富さは競争力の源泉だといえよう。
現在の主力製品は電気自動車(EV)用リチウムイオン電池(LiB)の部品向け加工。現在、月1億本超を生産しており、2025年は1・5倍に拡大する見通しだ。増産に向けて、新たな機械の搬入とライン組み込みが始まる。
(2024/11/6 12:00)
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