(2024/11/6 17:00)
【千葉】AstroX(アストロエックス、福島県南相馬市、小田翔武社長)は、2029年4月期をめどに小型ロケットで小型衛星を宇宙に輸送する事業を始める。29年4月期に3機の小型ロケットを打ち上げ、特に需要が高まる重さ100キログラム以下の衛星を高度500キロメートルの宇宙軌道に乗せる。1回の打ち上げコストを5億円と想定している。31年4月期に50機に引き上げ、売上高290億円(29年4月期目標は25億円)を目指す。
高度20キロメートル前後の成層圏まで小型ロケットを大気球で運び、そこからロケットを空中発射する方式を採用する。地上から打ち上げるロケットが最もエネルギーを要する空気のある層を大気球で脱出することで、省エネルギーと低コスト化、射場に依存しない打ち上げが可能になる。そのため打ち上げコストを従来比で3分の1にできるという。
現在、福島県南相馬市にロケット生産工場の建設を進めており、早ければ12月にも稼働する。部品は主に福島県の企業から調達する方針だ。31年4月期までに量産体制を構築する。まず高度100キロメートルの宇宙空間に到達して帰還する単段式ロケットを生産。26年4月期までに打ち上げの成功を目指す。
アストロエックスは千葉工業大学などと技術連携しており、千葉工大宇宙輸送工学研究室の和田豊教授が最高技術責任者(CTO)を務めている。同大と固体燃料と液体酸化剤を推進剤とするハイブリッドエンジンも共同開発。このエンジンを搭載したロケットで、9日に高度10キロメートルへの到達を目指す実験を実施する。これまでにも非係留気球からの方位角制御での小型ロケットの空中発射実験などに成功した実績がある。
30年4月期に売上高95億円を目指しており、新規株式公開(IPO)も視野に入れる。
20年以降、日本には毎年数十機以上の小型ロケットの打ち上げ需要があるといわれる。今後は衛星通信に加え、防災や漁業などでも衛星データの活用が進むことから、需要の大幅な増加が見込まれる。20年代後半には年間1000機以上が必要になる可能性があり、アストロエックスは旺盛な需要に国産ロケットで対応する。
政府も日本の宇宙産業の市場規模を20年の1兆2000億円から、30年代早期に2兆4000億円に倍増させる目標を掲げる。また世界の宇宙産業の市場規模は21年の43兆円から、40年には120兆円以上に成長することが見込まれている。
(2024/11/6 17:00)
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