(2024/12/4 12:00)
イチカワは製紙会社の抄紙工程で紙に含まれた水分を搾るためのフエルトやベルトを手がける。全製品を国内で生産し、これまでに約45カ国・470工場への出荷実績を持つ。創業75年余の今、設計や製造工程を再編し、高機能設備を導入する生産の効率化に余念がない。一方、機械化が難しい縫合や検査などの工程では熟練者が技能を発揮している。ハイテクと人の技の調和で競合との差を鮮明にしていく。
紙づくりでは木材パルプなどの繊維を水の中で分散させて絡み合わせた後、圧力をかけて脱水する。フエルトやベルトでいかに効率良く水を搾れるかが紙の品質を決定付ける。
イチカワはフエルトでいえば、岩間工場(茨城県笠間市)が機織り、織整、縫合というベースとなる基材をつくる前工程、柏工場(千葉県柏市)が基材への繊維層の針打ちから検査、出荷までの後工程を担う。2工場計の約20年間の設備投資額は数十億円に上る。製法の改良もあってフエルトの生産性は年率2%超向上させている。
岩間には33メートル幅の織機、柏には13・5メートル幅のニードルマシン(針打ち機)があり、いずれも世界最大級。現状さまざまなサイズの製品に対応する。同ニードル工程では次工程とともに、生産能力を導入前比約20%高めた。
機械による省力化を進めているが、人の技は欠かせない。平らな基材の両端をつなぎエンドレス形状にする縫合工程では、傾斜した作業台に向かって極めて精緻な仕事が続く。一見して継ぎ目が分からない。手先の器用さと忍耐力の成果だ。
同じ工程でも岩間は小型の基材、柏が大型の基材を手がけ、ともに8人程度が担当する。数ある製品の中で、顧客のマシンへの装着作業の負荷低減と安全性向上に適した「シームフエルト」は受注を伸ばしており、矢崎孝信社長は「丁寧な手仕事が製品力を支えている」と力を込める。
紙メーカーは抄紙用具の機能だけでなく外観にも目を光らせており、同社は顧客の厳しい品質要求に応えて世界的企業に成長した。検査工程では目視による外観検査に加え、重量や通気度、厚さなどは手触りのチェックが必要だ。梱包工程では客先での開梱時、使用時の作業性、安全性への考慮が求められる。
「製造品種が多く機械化が難しい領域があり、人手によるきめ細かい作業が少なくない」(笠井宏賢岩間工場長)。こうした地道なモノづくりこそが、海外競合品との差別化のポイントといえる。
(2024/12/4 12:00)
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