現代の名工／マシニングセンタオペレーター デンソー・寺嶋克征氏 円滑な量産へ試行錯誤

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デンソー湖西製作所担当課長の寺嶋克征さん（写真左）は３８年間にわたり機械加工一筋の技術者。試作部が長く、設計が描いた図面の実現に向け、材料や加工方法の選定から、量産に必要な治具の開発まで何でも手がける。

目指すのはスムーズな量産。試作では寸法のど真ん中を実現した「チャンピオン品」が可能だが、量産では交差の上限や下限になることも想定される。これを見越し、「わざと意地悪に作り、異音が出ないか、壊れないかを再現する。この試行錯誤が大切」と語る。

１９８６年にデンソー工業学園の門をたたき、技術者の基礎を学んだ。１８年にデンソーが吸収した自動車用小型モーター事業を手がける子会社「アスモ」でマシニングセンタオペレーターとして活躍。パワーウインドーやワイパー、エンジンやブレーキを制御するモーターなど数多くのモーターを開発した。

重要視するのが手の感覚。「今ではＣＡＤ。その前は制御盤にＧコードを打ち込んでいた。それでもフライス盤で刃物の回転数などを意識しながら削った感覚が適切な条件を導き出す」と語る。

モノづくりの楽しさを子どもたちに伝えようと、地元小学校の理科実験教室で“先生”を務めた。現在も愛知県豊橋市が進める放課後に学べる機会「トヨッキースクール」で授業を開く。技術者を目指す後輩には「現状に満足せず、こだわりを持ってくれ。いい物ができても、もっといい物ができるかもしれない」とエールを送る。