(2020/9/1 05:00)
首都直下や南海トラフなどを震源とする大地震に備えるには、個人の防災意識を高め、行動変容を促す必要がある。
スマートフォンなどの普及により、防災情報が豊富になり、情報伝達は迅速になっている。ただ、防災心理学が専門の矢守克也京都大学防災研究所教授は、著書『巨大災害のリスク・コミュニケーション』で、防災情報の充実や進化が、負の効果として「行政依存」や「情報待ち」といった受け身の姿勢を生んでいると指摘する。
防災意識を向上させる新たな試みとして「精密体感震度」に注目したい。個人が「どれくらい揺れを感じたか」をスマホで報告し、情報共有する仕組み。大木聖子慶応義塾大学准教授の研究グループがアプリケーション開発のJX通信社(東京都千代田区)と共同開発し、スマホ利用者向けに提供を始めた。
利用者は地震発生時に、専用アプリの画面上で、どの程度の揺れを感じたかを震度0―7から選択して投稿する。個人の体感に頼るので、情報の正確さにバラつきは生じるが、おおまかな傾向は把握できる。
気象庁は1996年に担当者の体感による震度から、震度計を活用した震度情報に移行した。ただ、震度計は全国に約4300点で、単純平均すると各自治体に2―3点しかない。震源真上の地表点(震央)に近く揺れが大きい地域でも、震度計まで距離があると震度を正確に観測できない恐れもある。
研究グループは、震度計では捉えきれない地域の揺れを補完するとともに、利用者自らが震度を認識することで、発災時に主体的な行動をとるきっかけになると期待する。
災害対応は自身や家族の身を守る「自助」、近隣住民や地域による「共助」、さらに国や自治体による「公助」の順が基本である。東日本大震災では、「津波てんでんこ」の教訓が生かされ、自分の身は自分で守るという防災意識が寄与して、犠牲者を少なくできた例もある。
9月1日は「防災の日」。一人ひとりが防災の主体であるという自覚を持って行動したい。
(2020/9/1 05:00)
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