(2020/9/2 05:00)
インターネット上の「炎上」は企業にとって大きなリスクである。新型コロナウイルス感染の長期化で社会に不安心理がくすぶる中では、より注意が必要だ。備えを固めたい。
炎上とは、特定の話題に関する議論の盛り上がり方が尋常ではなく、多くのブログや掲示板で「バッシング」と呼ばれる攻撃が繰り返される状態をさす。国内での発生件数は、スマートフォンと会員制交流サイト(SNS)が普及し始めた2011年を境に急増している。近年は著名人の言動が取りざたされるケースが多いが、企業関連の事案も少なくない。
ネット上のリスク検知や解決策の提示を主事業とするエルテスは、月次で炎上の実態を調査している。それによると、20年上半期(1―6月)に発生した炎上の要因は「顧客クレームや批判」が38%でトップ。次いで「不適切な発言や行為・失言」(37%)、「不祥事・事件ニュース」(15%)、「情報漏えいや内部告発」(9%)、「異物混入」(1%)の順になっているという。
火種となった企業はブランドイメージの悪化により、採用や製品販売などに影響が出かねない。例えば広告表現が性差別や人種差別だと受けとられないか。コンテンツの制作者は、訴求力や奇抜さにこだわるあまり「木を見て森を見ず」になりやすい。多様な視点からチェック体制を設け、差別や偏見を引き起こす要素がないか、内容を精査する必要がある。炎上の事例集を作成し、社内で情報共有しておくことも有効だろう。
ネット社会の進化とともに、大手企業は炎上への対応力を強めてきた。それでもデマや悪意のある誤解の拡散が炎上につながる例が散見される。原因を見極め、いわれなき被害に遭った場合は正しいメッセージを速やかに公表する毅然とした対応が求められる。
コロナ禍の中で、感染防止策や、万一の時の顧客対応をウェブ上で随時、情報開示する企業もある。顧客の不安を和らげる効果が見込めよう。対策に知恵を絞ってほしい。
(2020/9/2 05:00)
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