[ オピニオン ]
(2015/11/20 05:00)
日本と韓国の造船・重機大手が海洋構造物の建造工事で苦境に立たされている。原油価格下落に伴うプロジェクト遅延や設計・契約変更による生産混乱、ブラジルの汚職問題の余波など要因はさまざまだが、経営への打撃は大きく、事業継続に黄信号がともる。ただ石油・天然ガスなどの海洋資源開発が成長領域であるのは間違いない。政府の支援や、国境を越えた企業間の技術交流を模索してもらいたい。
韓国では現代重工業、サムスン重工業、大宇造船海洋の大手3社が海洋事業を引き金に、巨額損失を計上した。深刻な経営危機で不透明な会計も明るみに出た大宇造船は、債権団から4兆2000億ウォン(約4400億円)の金融支援を受ける。各社とも大規模リストラによって自力再建を急ぐが前途は多難だ。
わが国でもIHIが、愛知工場(愛知県知多市)のドリルシップ(掘削船)や浮体式海洋石油・ガス生産貯蔵積出設備(FPSO)の工程混乱などで2015年4―9月期に当期赤字に転落。事業を縮小する。川崎重工業はオフショア支援船の納期が1年延期になるなど海洋案件が足を引っ張り、16年3月期に船舶海洋事業の営業損益が30億円の赤字になる見通しだ。
標準設計が基本の一般商船と異なり、海洋プラントは発注側の設計変更要求が頻繁に発生。耐腐食性に優れた塗装や専用機器の調達などで契約予算に収まらないケースが珍しくない。資源価格の急落から、発注側が一方的にキャンセルを通告することもある。
造船・重機各社がこうした苦境を脱するには、政府支援や企業間連携が必要ではないか。韓国は12年に官民一体の方針を打ち出している。また韓国大手3社は米国船級協会などと共同で、海洋プラントの材料、設計、業務手順の国際標準仕様策定に乗り出した。
日本勢は韓国より事業規模は劣るものの、直面している課題は同じ。政府は「海洋基本計画」で海洋資源開発関連産業の育成をうたっており、官民の協調に期待がかかる。さらに日韓の企業同士による連携も、視野に入れるべきだ。
(2015/11/20 05:00)
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