[ オピニオン ]
(2015/12/1 05:00)
安倍晋三政権が産業政策の柱に据える「ロボット革命」は、2020年の東京オリンピックをマイルストーンに技術開発と利活用、標準化などの世界展開の3点で世界トップを目指す。日本は産業用ロボットでは先行するものの、サービスロボットでは成功事例を生み出せず苦しんできた。機能を特化した「役に立つロボット」の開発が求められている。
経済産業省は1月に「ロボット新戦略」を発表した。ドイツの「インダストリー4・0」や、米国の「インダストリアル・インターネット・コンソーシアム」への対抗をにらむ意欲的なものだ。ただ具体的には、用途ごとのロボット開発が先行するだろう。
原子力発電所の廃炉処理が進む福島県浜通り地域を、ロボット開発の集積拠点に育てようというビジョンには大いに意義がある。人の立ち入れないほど放射線の高い環境下で、溶け落ちた核燃料を取り出すにはロボットが不可欠だ。こうした技術は将来の通常の廃炉にも応用できよう。
他方で「日本の津々浦々までロボットがある日常を実現する」というシーンは、まだ想像しにくいのではないか。現在約600億円の非製造業向けロボットの市場規模を20年に20倍の1兆2000億円に拡大するという目標の達成には、多くの技術開発が必要だ。
日本がサービスロボットの成功事例を生み出すカギは、ニーズ主導型の発想である。人型ロボットは何にでも使えるようでいて、高価で使いにくい存在になりかねない。ロボット普及の加速には”人型の呪縛“から逃れ、ニーズをとらえ直すことが重要だ。
例えば自動車の自動運転技術。完全無人運転に近づけば、ロボット自動車と呼んでよくなる。ロボット技術を搭載した車が日本の津々浦々を走る光景ならばイメージしやすい。
2日に東京ビッグサイト(江東区有明)で国際ロボット展が開幕し、関連企業が最先端の技術を競う。価格に見合う機能を備えた実用的なロボットを作り出せるか。問われているのは、日本の製造業の実力そのものである。
(2015/12/1 05:00)
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