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産業春秋/神戸牛は遠く

(2016/1/14 05:00)

神戸市内の、行列のできる「神戸牛」の店。ステーキは高価なので財布と相談して牛丼を食す。口に入れると、とろける食感で文句なしにおいしかった▼昨年、大筋合意した環太平洋連携協定が発効すると、日本の農産物は世界で競争力を問われる。但馬地方(兵庫県北部)や淡路島で育てられ、港町・神戸を通じて世界に知られた神戸牛は輸出に優位とされる筆頭格だ。農林水産省は「地理的表示保護制度」第1弾として昨年12月に全国7品目を登録。その中に「神戸ビーフ」と「但馬牛」の2品目が入った▼しかし追い風に反して生産は追いついていないという。兵庫県畜産課によると「数年前から但馬牛の増頭作戦を展開するが、思うように伸びていない」。目標の年2万頭に対し現状は1万6000頭。高齢化もあって県の畜産農家が年々減っているのも要因だ▼現在、神戸牛の輸出は17カ国・地域で拡大中。このため但馬牛の子牛や枝肉の価格は高止まり状況にある。「安定して高価なことは、畜産農家の増頭意欲をかきたてるはず」と県は期待を寄せる▼ブランド力ある商品の適正価格は当然。しかし海外の金持ちばかりが神戸牛ステーキを楽しむのかと思うと、やや複雑な心境になる。

(2016/1/14 05:00)

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