[ その他 ]
(2016/3/22 05:00)
春の陽気に誘われて但馬地域(兵庫県北部)を訪ねた。山陽本線と播但線を乗り継いで3時間余。JR竹田駅から徒歩で天空の城と称される国史跡『竹田城跡』(朝来市)へ向かう▼テレビCMや映画のロケ地として一躍有名になった城跡は、雲海に浮かぶ幻想的なイメージが強い。ただこのシーンに出会えるのは秋の早朝だけとか。それでも標高300メートル以上ある山の頂に築かれた石垣遺構は400年以上も前から今の形を残し、一見の価値があった▼県の観光振興課によると、竹田城跡の入場者数は2011年度まで10万人に満たなかった。それが観光キャンペーンやテレビの効果で13年度に50万人を突破。14年度は58万人と過去最高を記録した。15年度はやや落ち着き、40万人ほどになりそうだという▼急激に観光客が増えたことの対策だろうか。見学コースはロープと杭(くい)を使って一方通行にしてあった。人が歩く区画の地面には土のうを埋め、黒いポリエステルの不織布を敷いてある▼いささか風情を欠くように思えるし、不格好でもある。ただ、それは史跡の保護を第一に考えた結果という。山上パノラマの開放感と同時に、観光振興と「本物」の維持を両立することの難しさを考えさせられた。
(2016/3/22 05:00)