[ その他 ]
(2016/4/8 05:00)
失敗や不注意で使い物にならなくなることを「おシャカになる」と言う。一説には、江戸っ子の鋳物師が不良品の理由を「火が強かった」と述べたのがきっかけとか。東京弁は「ヒ」と「シ」があいまいなので「シガツヨカッタ」と聞こえる。これをお釈迦(しゃか)様の誕生日の「4月8日」に掛けた▼モノづくりにおシャカはつきもの。原因を突き止めて対策することが肝心だ。前述の江戸の鋳物師は、火力が問題だと特定した。つまり適切な温度に保つ技術があれば、失敗を減らせるわけだ▼おシャカをただの失敗作とみるか、改善に役立つ糧ととらえるかで道が分かれる。金属加工のベテランによれば、作業時の力の入れ具合などは「おシャカをたくさんつくって感覚を身につけなければならない」そうだ▼不良品をおシャカと呼ぶのもご縁のひとつ。その名にちなんで、ありがたく教えを請うのがよいだろう。失敗を師と仰いで、若い技能者は熟練工になる▼当のお釈迦様は、一族の名が日本のモノづくり力の向上に結びつくとご存じだったろうか。ことしの花祭りでは天と地を指さす誕生仏に甘茶をかけながら、製造業の重要性を訴えてみよう。すっかりお見通しで“釈迦に説法”かもしれないが。
(2016/4/8 05:00)