[ オピニオン ]
(2016/5/27 05:00)
広島は今日、現職の米大統領を初めて迎える。戦後71年目。被爆地に立つオバマ大統領が、何を見て、何を感じて、何を発信するのか。被爆者ならずとも固唾(かたず)をのむ思いである。
内閣府によると、米国に親近感を持つ日本国民は84・4%に達するという。広島市民も同様。“恨み骨髄に徹している”はずの被爆者さえ「よう来てくれることになった。謝ってほしいとは思っとらん。核廃絶へ向け、広島から行動してもらいたい」(坪井直広島県被団協理事長)が大半だ。
米国では「原爆投下は戦争の早期終結のためには正しかった」との意見が根強い。百歩譲ってその意見に与しても、それによって救われた命に比べ、あまりに多くの市民を犠牲にした事実は拭えない。
核兵器と人類。英国の哲学者、ラッセルは「文明も繁栄も、思想信条も人類の生存が大前提。人類が地球に生き残りたいのなら核兵器の全廃しかない」といった。核の傘、核兵器の抑止力など幻想に過ぎない。
オバマ大統領は「核なき世界の実現」を提唱した。一方で約7000発の核爆弾を有する米軍の最高司令官でもある。緑濃い平和公園に記す歴史的な一歩が、人類が生み出した最も醜悪な武器の排除の道を拓(ひら)くことを祈念する。
(2016/5/27 05:00)