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社説/「ホシザキ奨学金」に学ぶ−配当原資に給付、産学協力の新方式

(2016/8/8 05:00)

名古屋大学と名古屋工業大学がそれぞれ設立した「ホシザキ奨学金」が、初の受給者を決めて始動した。「モノづくりを志す学生のために」と、業務用製氷機メーカーのホシザキ電機会長兼社長の坂本清志氏と妻の春代さんが持ち株を寄付して創設した。株式配当を原資にする給付型奨学金は日本初という。産学が協力した人材育成の一つの形として参考にしたい。

ホシザキ奨学金は、坂本夫妻が保有するホシザキ株を現物出資して会社方式の「坂本ドネイション・ファウンデイション」を設立。この新会社の株を名大と名古屋工大に4万5000株ずつ寄付し、両大学への配当を奨学金の原資にする。新会社の配当はホシザキの業績変動に直接関係しない仕組みだ。

具体的には工学部系の学生と大学院生を対象に、毎月12万円を原則2年間支給する。卒業後の進路に条件はない。名大の松尾清一総長は、この方式を「継続性がある」と評価する。

奨学金の給付を受ける大学生は、いまや2人に1人ともいわれる。著名なのは日本学生支援機構(旧日本育英会)で、無利子の第一種、利子の付く第二種がある。返済が必要なのはどちらも同じで、卒業後に返済に苦しむケースが少なくない。

これに対し、返済のいらない給付型奨学金の必要性が論じられている。給付型では企業からの寄付に基づいて運営する“冠奨学金”が先行している。その多くは公益または一般財団法人の形態だが、実際の給付に厳しいルールがある場合が少なくない。配当を原資にすれば、給付条件の自由度を高められる。

奨学金すべてを、返済不要の給付型にすべきかどうかについては賛否両論があろう。ただ将来の返済負担を恐れて、学ぶ意欲のある学生が奨学金を敬遠するようでは困る。また家計の教育費の軽減は、少子化問題の解消の一助にもなる。

坂本氏は「学生に心置きなく学んでもらい、優秀な人材が育ってほしい」と話している。次代を担う人材の育成のために、産業界がどんな協力ができるかを改めて考えたい。

(2016/8/8 05:00)

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