[ オピニオン ]
(2016/11/1 05:00)
第二次大戦中に川崎航空機工業(現川崎重工業)が製造した旧陸軍の三式戦闘機「飛燕(ひえん)」が、70年の時を超えて甦(よみがえ)った。最高時速590キロメートル、高度1万メートルの編隊飛行を可能とする当時の世界水準の名機。かつての航空機王国・日本を象徴する。
川重が創立120年を機に、国内に唯一残る機体を修復。神戸ポートターミナルホール(神戸市中央区)の記念展で3日まで一般公開している。その勇姿を一目見ようと、先週末までに3万5000人を超す来場者があったという。
世界最速を目指した先人の情熱は、川重のモノづくりに脈々と受け継がれている。同社の主力事業である航空機部門からは、自衛隊の「P1」対潜哨戒機や「C2」輸送機などが次々と羽ばたいた。
精緻な技術力は他事業にも及んでいる。ひとつの例が同社の最高峰のスポーツバイク「ニンジャH2R」だ。流体技術を応用したボディーなどは航空機のノウハウ。技術の融合は世界で戦う力へと昇華した。
ただ節目となった今年、川重の祖業である造船事業は世界的な海運不況のあおりを受け、存続の危機に追い込まれている。長い歴史の中には、もっと大きな危機もあったはず。先人の偉業を胸に、飛躍の道をみつけてほしい。
(2016/11/1 05:00)