[ トピックス ]

グローバル経営・適地生産適地販売/渦潮電機−フィリピンで3輪EV

(2017/6/21 05:00)

  • フィリピンのパートナー企業、アルマゾーラの3輪EV生産ライン

  • 6000台の年産能力を確保

■海外でゼロからの挑戦/年産6000台、置き換え需要照準

渦潮電機(愛媛県今治市、小田雅人社長、0898・25・8282)は、フィリピンで3輪電気自動車(EV)の製造・販売事業を拡大している。配電盤など舶用機器をメーンに、プラント事業、EV事業を手がける同社だが、EVでは当初から市場を海外に求める挑戦的な展開。2014年の販売開始以降、フィリピン政府やマニラ市などから受注を得て、3輪EVメーカーとしての存在感を高めている。(松山支局長・森野学彦)

舶用機器では04年、ベトナム・ハノイへの舶用配電盤の製造子会社開設を皮切りに、上海、シンガポール、フィリピンに拠点を設けてきた。これらは既存事業領域におけるコスト削減と現地対応の強化が狙いだった。一方で3輪EVはゼロからのスタート。現地の乗り合いタクシー「トライシクル」のEV化をにらんだ新規参入になる。「量産製品に初めて足を踏み入れた」と小田社長は言う。

渦潮電機は11年にEV事業買収でEV技術を獲得した。翌年から車両開発に着手し、愛媛県のEVプロジェクト事業にも参画。電池制御システムを愛媛県と共同開発し、モーターやリチウムイオン電池などを搭載した独自のパワーコントロールユニット(PCU)を完成させた。一般市場モデルの「68VM」は最高時速50キロメートル。1回の充電で約60キロメートル走行できる。主要機器を密閉構造にすることで増水時の走行も可能にした。

現在は日本からフィリピンにPCUを送るほか、フロントフォーク、タイヤなどを中国から輸入。FRPのボディーやシャシーなど構成部品の4割を現地調達し、パートナー企業、アルマゾーラの工場に設けた生産ラインで完成車に組み立てる。当初は日産12、13台だったが、16年10月に工程を再編して、1工程にかかる時間を平準化。日産20台に増加し、年産6000台を確保した。

「日本では開発コストがかかりすぎる。海外で市場をつくって逆輸入する形でなければ(EV事業は)難しい」(小田社長)。フィリピンは12年以降、東南アジア諸国連合(ASEAN)域内でトップクラスの経済成長率を誇り、経済活動が活発だ。3輪タクシーのトライシクルは350万台以上が走り、マニラ首都圏だけで20万台。このうち10万台をEVに置き換える計画があるという。

同社は、マニラ市の独自プログラムに対し、すでに280台を納入。観光地での実証実験用に50台を納入するなど実績を上げている。さらに16年はアジア開発銀行(ADB)とフィリピン・エネルギー省(DOE)の電動3輪自動車プロジェクトで3000台を受注。これを呼び水にアジア各国の4輪メーカーなどからも引き合いが来ているという。

フィリピンの16年の政権交代で、3000台の受け入れが遅れるなど、新興国特有のトラブルがありながらも、市場開拓は着々と進む。ASEANでは同様の小型車両が2500万台普及しているとも言われる。今後、フィリピンで低価格化などに取り組む一方、他国への展開、応用製品の開発も進める構えだ。

(2017/6/21 05:00)

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